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2022年1月号
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■知財基礎講座■
◇はじめに
■ニューストピックス■
●4月1日より訂正審判等の通常実施権者の承諾不要に
● 1月から新たな公報システムによる公報を発行(特許庁)
● 音楽機器のズームが米Zoomを商標権侵害で提訴
● 編み物のユーチューブ動画、削除申し立てで賠償命令
● 特許庁と農林水産省がコラボ動画を公開
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■ 知財基礎講座 ■
◇はじめに
特許などの知的財産は会社の有用な資産、競争力の源泉です。そこで、社内に技術部、特許部、知財部などの専門部を設け、人員を配置して、社内での発明の発掘・創作活動、特許調査、特許出願、特許活用の検討などが、常時、専門的に行われていることが望ましいのですが、そのようにすることは簡単ではありません。
このような体制を構築することが簡単ではない企業の方には知的財産の専門家である弁理士に相談することをお勧めします。
「知財基礎講座」では、会社内に特許専門ご担当の方がいらっしゃらないような企業の方から弁理士が受けることのある質問をいくつか紹介し、その質問に回答する形式で特許実務について紹介します。
当面は、次のような問い合わせに対して毎月一問ずつ回答することを企画しています。
1.特許出願公開
「特許出願を行うと特許出願した発明の内容が同業他社に知られてしまう」と聞いたことがあります。特許出願を行うとその内容はすぐに世の中の人に知られてしまうのでしょうか?
2.特許出願公開の効果
当社が販売している製品に対して、「自社の特許出願に抵触する」、「補償金請求権」などと記載されている「警告書」を受け取ったのですがどうすればよいでしょうか?
3.特許と実用新案登録の違い
当社の製品に対して実用新案権侵害だとする「警告書」を受け取りました。どのように対応すればよいでしょうか?
4.特許調査の方法
以前ライバルメーカーが特許を取得したので同様の製品は製造しないことにしてきました。何年か経過したので、もうそろそろ特許が無くなったのではないかと思われるのですが、調べることはできますか?また、その後、ライバルメーカーが特許出願を行っているならば、その内容を調べることはできますか?当社の技術分野でどのような特許出願が行われているか当社でも簡単に調べることができますか?
5.新規性喪失の例外
展示会で当社の新製品を紹介したところ引き合いが多く来ています。実際の販売が始まる前に特許出願したいのですが、既に展示会に出展して社外の人に見せているので、これからでは特許出願できないのでしょうか?
6.特許事務所(弁理士)への特許出願の依頼
社内でまとめたアイデアについて特許事務所(弁理士)に特許出願を依頼に行きたいのですが、アイデアを説明するためにどのようなものを準備すればよいでしょうか?
7.特許出願人になれる者
特許出願を他の会社と一緒に行いたいのですが、可能ですか?一緒に出願することにした場合、注意しておくべきことはありますか?また、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することは可能ですか?
8.特許表示、虚偽表示
特許出願を行ったので、特許出願済の発明が採用されている製品に「特許出願中」と表示してよいですか?「虚偽表示はやってはいけない」と聞いたことがあるのですが、どんなことが「虚偽表示」になるのでしょうか?
9.特許出願後の内容追加
先頃特許出願していただいた発明と基本的な原理は同じなんですが、少し変えるともっとよくなるとわかりました。これは新しく特許出願しないといけませんか?先頃の出願に付け加えることはできませんか?
10.特許庁の審査結果を受け取る時期
特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?
11.特許庁への情報提供
特許調査でライバルメーカーが行っている特許出願を発見しました。この特許出願で特許請求されている発明は当業界では従来から行っていたことの延長線上にあるものなので、特許は成立しないのではないかと思います。ライバルメーカーの特許出願に特許成立することを阻止する目的で何かできることはありますか?
■ニューストピックス■
● 4月1日より訂正審判等の通常実施権者の承諾不要に
従来、特許権者が、訂正審判や訂正の請求をする場合には、通常実施権者(ラインセンスを受けた者)の承諾を得ることが必要でした。
しかし、特許権のライセンス形態は複雑化してきており、訂正等についてすべての通常実施権者から承諾を得ることは困難です。
このような状況に対応するため、4月1日より特許権の訂正等において、通常実施権者の承諾は不要となります。
【承諾が不要となる手続】
・訂正審判の請求
・特許無効審判または特許異議申立ての手続の中で行う訂正請求
・実用新案権の訂正
・特許権、実用新案権及び意匠権の放棄
ただし、専用実施権者や質権者は引き続き承諾が必要です。
引き続き、許諾を必要としたい通常実施権者は、権利者とあらかじめ取り決めておくよう、ライセンス契約を見直しておく必要があります。
このほか、商標権の放棄については、引き続き、専用使用権者、質権者及び通常使用権者の承諾が必要となります。
● 新たな公報システムによる公報を発行(特許庁)
特許庁は、本年1月12日より新たな公報システムによる公報を発行すると発表しました。
主な変更点:
①公開公報(特許)、登録公報(特許及び実用新案)、登録公報(意匠)、公開公報(商標)及び登録公報(商標)とも、「毎週発行」から原則「毎日発行」
②再公表特許を廃止
③判定公報を廃止
④PDF公報の発行を中止
公報システム刷新に対応した公報については、新たに公報発行サイト(新URL)を立ち上げ、2022年1月12日から発行する予定です。詳細は特許庁HPをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/koho/oshirase/system-sasshin20201222.html
● 音楽機器のズームが米Zoomを商標権侵害で提訴
音楽用電子機器の「ズーム」は、自社の登録商標と「極めて類似した標章」を使用しているとして、ビデオ会議システム「ZOOM」を運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZVC)を相手取り、商標権の侵害行為の差し止めを求める訴訟を東京地裁に提訴したと発表しました。
ズームの発表によると、ZVCが会議用プログラムを提供する際に使用している「Zoom」のロゴがズームの登録商標と極めて酷似しており、差止等の請求を行なったとしています。
ズームは「当社登録商標が法的に保護されるべき知的財産であることの確認が訴訟の目的」として、損害賠償請求は行わず、和解金による解決も受け付けない姿勢を示しています。
また、ズームは昨年9月にもZOOMの国内販売代理店を務めるNECネッツエスアイを相手取って同様の訴訟を提起しています。
このとき発表された文書では、ズームが提供していないビデオ会議サービスに関する問い合わせがサポート窓口に殺到したことや、社名の誤認によって株価が乱高下したことを挙げており、類似したロゴの継続使用によって事業運営上の支障だけでなく、投資家への損害が生じていることを主張しています。
ズーム社の「商標登録(4940899)」
米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ社の「商願2020-61572」
● 編み物のユーチューブ動画、削除申し立てで賠償命令
編み物の動画を投稿している「ユーチューバー」の女性が、同じような動画を投稿する別の「ユーチューバー」からの申し立てで動画を削除されたのは不当だとして損害賠償を求めていた裁判で、京都地方裁判所は削除の申し立てをした被告側に慰謝料と広告収入の損害など計約7万円の支払いを命じました。
被告女性が「著作権を侵害された」とユーチューブに通知し、ルールに基づき投稿した2本の動画が一時、削除されました。このため原告女性が「編み方は著作物にあたらず、通知を悪用した不法行為」と訴えていました。
判決では、「技術や手法といったアイデアは、著作権法による保護の対象とはならない」と指摘し、双方の動画については「編み方の説明や表現方法が類似しているとは認められない」と判断しました。
その上で、ユーチューブに著作権侵害を通知した被告側の対応について、「著作権侵害の成否に問題があると認識しながら、独自の見解で通知した行為に著しい注意義務違反がある」として、被告側の過失を認めました。
● 特許庁と農林水産省がコラボ動画を公開
特許庁は、農林水産省YouTubeチャンネルBUZZ MAFFと連携し、地理的表示(GI)保護制度や品種登録制度など知的財産保護制度の認知拡大に向けたコラボ動画を公開しました。
特許庁としては、他省庁と連携したYouTube動画配信は初めての取組となります。農林水産業を支える知財と、それを取り扱う専門官庁である特許庁業務の紹介を通じて、幅広い層に特許・商標等の知財を身近に感じてもらうことを目的としています。
両省庁は、「動画を通し、知財と農林水産業との関わり等について、関心を深めていただければ幸いです」としています。
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