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メルマガ6月号をお届けします。今月の知財基礎講座では「新規性喪失の例外」についてご説明します。また、ニューストピックでは、企業価値向上に資する知的財産活用の事例をご紹介しています。是非ニューストピックをご確認ください。
━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
2022年6月号
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■知財基礎講座■
(5)新規性喪失の例外
■ニューストピックス■
● 企業価値向上に資する知的財産活用の事例集(特許庁)
● 口頭審理のオンライン率65.2%(特許庁)
● 「ファスト映画」めぐり5億円賠償請求(映画会社など13社)
● 水素燃料電池の特許、中国が世界の7割(WIPO)
● 知財侵害で中国など7か国を優先監視(米通商代表部)
● 助成金情報 海外知財訴訟費用保険に対する補助
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特許庁は、「企業価値向上に資する知的財産活用事例集-無形資産を活用した経営戦略の実践に向けて-」を公開しました。
事例集は「経営層と知財部門のコミュニケーション」に着目して実際の事例を取りまとめた内容です。
知財・無形資産戦略は、大企業のみならず、中小企業にとっても重要です。自社の知財・無形資産戦略を検討する際の参考資料としてご活用下さい。
■知財基礎講座■
(5)新規性喪失の例外
【質 問】
展示会で当社の新製品を紹介したところ、引き合いが多く来ています。実際の販売が始まる前に特許出願したいのですが、既に展示会に出展して社外の人に見せているので、これからでは特許出願できないのでしょうか?
【回 答】
特許出願を行う前に発明品を展示会に出展していた場合でも出展の日から1年以内に特許出願を行うことで特許取得可能になることがあります。これを「新規性喪失の例外」といいます。今回はこの新規性喪失の例外について説明します。
<特許出願前に新しさを失うと特許取得できない>
どこの国の特許制度でも、特許出願より前に、秘密を守る義務を有しない人に、知られた発明は、特許を受けることができないのが原則です。既に世の中の人に知られてしまった発明に、その後の特許出願によって特許権という独占排他権を与えるのは、世の中に混乱を与え、産業の発達に役立たないと考えられるからです。
<特定の条件が満たされると例外扱いを受け得る>
しかし、特許庁長官が指定している学会等で論文発表したり、刊行物への発表を行うことなどによって自らの発明を公開した後に、その発明について特許出願をしても一切特許を受けることができないとすると、発明者にとって酷で、産業発達への寄与という特許法の趣旨にもそぐわないことがあると考えられます。
そこで、従来から、所定の条件の下で発明を公開した後に、所定の条件を守って特許出願した場合には、その公開によっては、その発明の新規性は喪失していないものとして例外的に取り扱うようにしています。これを「発明の新規性喪失の例外」といいます。
現在では、集会・セミナー等(特許庁長官の指定のない学会等)で公開された発明、テレビ・ラジオ等で公開された発明、販売によって公開された発明のように、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公開された発明についても新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるようになっています。
<新規性喪失の例外が認められる条件>
新規性喪失の例外適用を受けるためには次の3つの手続が必要です。
1.新規性喪失行為後1年以内に特許出願を行う
特許を受ける権利を有する者(例えば、自分が完成させた発明についての特許を受ける権利を他人に譲渡していない時点の発明者や、発明者から発明についての特許を受ける権利を譲り受けている会社など)が、インターネットでの発表、展示会への出品、販売、新聞・テレビ・ラジオでの発表などを行うことによって、発明が、秘密を守る義務を有していない人に知られてしまった日から1年以内に特許出願を行う必要があります。
2.特許出願と同時に新規性喪失例外適用申請する
特許出願と同時に「新規性喪失の例外適用を受けたい旨」の申請を行う必要があります。
3.特許出願後30日以内に証明書を提出する
その特許出願の日から30日以内に新規性を喪失した公開の事実を証明する書面を特許庁へ提出する必要があります。
<新規性喪失の例外であって先願の例外ではない>
日本の特許制度では、同一の発明について複数の特許出願が競合した場合には、最も先の特許出願に特許権が与えられることになっています(先願主義)。
発明の新規性喪失の例外規定は、発明者などが特許出願を行う前にその発明を公表してしまった場合に、その日から1年以内に特許出願が行われる、等の条件が満たされるときに限って、その特許出願に係る発明の特許性(新規性、進歩性)を判断するときに、当該公表によっては新規性を失っていなかったものとする取り扱いでしかありません。
同一の発明について複数の特許出願が競合した場合に最も先の特許出願に特許権が与えられるという先願主義の例外規定ではありません。
<外国への特許出願には例外適用されない>
新規性喪失の例外規定については各国ごとに取り扱いが相違しています。インターネットでの発表、一般的な展示会への出品、販売、新聞・テレビ・ラジオでの発表などに関しては新規性喪失の例外が認められない国の方が多数です。
例えば、日本では新規性喪失の例外が認められて特許取得できたが、中国では、日本での新規性喪失行為(例えば、一般的な展示会への出品、販売)によって既に新規性を失った発明であるとして拒絶され、特許が認められません。
したがって、海外でも販売する製品であって、海外での特許取得も検討しなければならないものについては、原則通り、世の中の人に知られてしまう前に日本で特許出願を行うという注意が必要です。
世の中の人に知られてしまう前に特許出願を行うことが望ましいといっても、特許庁への特許出願を代理する弁理士、特許事務所にはどのような情報を準備して特許出願の依頼に行けばよいのでしょうか。
次回は特許出願の依頼に関するご質問への回答をご紹介します。
■ニューストピックス■
●企業価値向上に資する知的財産活用の事例集(特許庁)
特許庁は、「企業価値向上に資する知的財産活用事例集-無形資産を活用した経営戦略の実践に向けて-」を公開しました。
事例集は、企業価値向上に取り組む国内企業20社に対して行った実践事例のヒアリング調査から、「経営層と知財部門のコミュニケーション」などに着目して実際の事例を取りまとめた内容です。主な項目としては、「経営上の課題/中長期的な事業の方向性」「成長戦略の事例」「成長戦略の事例における知財戦略」「経営層と知財部門とのコミュニケーション」「知財戦略のステークホルダーへの開示について」の5項目について整理しています。
特許庁では、知財・無形資産活用を通した企業価値向上を目指す経営層や、知財部門・経営企画部門などに従事する人の円滑なコミュニケーションを図るため、同事例集の活用を呼びかけています。
事例集は特許庁のウェブサイトからダウンロードができます。https://www.jpo.go.jp/support/example/chizai_senryaku_2022.html?_fsi=YhrAYTmd
●口頭審理のオンライン率65.2%(特許庁)
特許庁は、オンライン口頭審理に関する関係資料を一覧化した「まとめページ」を公開しました。https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/general-koto/online-kankeishiryo.html
オンライン口頭審理の実施状況をみると、2021年10月1日から2022年3月31日までにオンラインでの口頭審理は30件(口頭審理全体の65.2%)が行われました。
新型コロナウイルス感染症の拡大やデジタル化に対応するため、2021年10月1日より、特許無効審判及び商標登録取消審判等の審理について、審判長の判断で、審判廷に出頭することなく、当事者等がウェブ会議システムを通じて口頭審理に関与できるようになりました。
この度公開された「まとめページ」では、実務ガイドやQ&Aをはじめとして、実施要領やオンライン出頭希望書の様式、各種トラブルと対応例等が公開されています。
特許 | 実用新案 | 意匠 | 商標 | 合計 | |
口頭審理全体 | 41 | 0 | 4 | 1 | 46 |
オンライン口頭審理 | 26 | 0 | 3 | 1 | 30 |
オンライン率 | 63.4% | 0% | 75.0% | 100% | 65.2% |
●「ファスト映画」めぐり5億円賠償請求(映画会社など13社)
映画を10分程度に短く編集した違法動画、「ファスト映画」を動画投稿サイトで公開したとして全国で初めて摘発され、有罪が確定した投稿者に対し、映画会社など13社が「著作権を侵害された」として総額5億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。
「ファスト映画」は、映画を無断で使用し、字幕やナレーションをつけて10分程度にまとめてストーリーを明かす違法な動画。投稿者は、インターネットに無断公開して広告収入を得ていました。
原告側は、動画再生1回当たりの被害額を200円と判断し、投稿者が運営していたチャンネルの再生回数から被害額を約20億円と算定。うち5億円を請求したとしています。
●水素燃料電池の特許、中国が世界の7割(WIPO)
世界知的所有権機関(WIPO)は、特許現況レポート「輸送関連の水素燃料電池」を発表しました。https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2022/article_0006.html?utm_source=WIPO+Newsletters&utm_campaign=8eb66401bb-PR_EN_890_170522&utm_medium=email&utm_term=0_bcb3de19b4-8eb66401bb-256874078
2020年度の世界の水素燃料電池の特許出願件数を国籍別にみると、中国が7,261件で最も多く、全体の69%を占めました。次いで日本(1,186件、全体の11.3%)、ドイツ(646件、6.2%)、韓国(583件、5.6%)、米国(403件、3.8%)がそれに続いています。2014年までは日本がトップを維持していましたが、2015年以降は、中国の独走状態が続いています。
輸送関連の水素燃料電池の出願件数をみると、世界全体で3,189件と、水素燃料電池全体の約3割を占めています。輸送手段別の割合では自動車が71%と最大で、船舶(10%)、航空(8%)が続いています。
企業別の輸送関連の水素燃料電池の特許に関しては、権利存続中の特許件数も公表。それによると、2021年の有効特許件数では、トヨタ自動車(2,720件)が最大で、現代自動車(1,402件)、ホンダ(1,191件)、ゼネラルモーターズ(GM)(697件)、フォルクスワーゲン(VW)・グループ(671件)などが続いています。
●知財侵害で中国など7か国を優先監視(米通商代表部)
米通商代表部(USTR)は、貿易相手国の知的財産権保護に関する状況を分析した「スペシャル301条報告書(2022年版)」を公表しました。
報告書では、知財保護に重大な懸念がある「優先監視国」に中国など7カ国を指定しました。特に中国に対しては、「偽造品や海賊版の原産国」と非難。「知的財産保護の状況を改善するため、抜本的な変化が必要」と保護強化を要求しました。
中国以外の優先監視国は、ロシア、インド、インドネシア、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ。優先監視国に準じる「監視国」にはカナダやブラジル、ベトナムなど計20カ国を指定。日本はいずれにも指定されませんでした。
中国は米国との「第1段階」貿易合意で約束した強制的な技術移転の禁止などの履行状況について、「措置の妥当性と効果的な実施に対して懸念する向きが続いている」として、注意深く監視すると表明しました。
● 海外知財訴訟費用保険に対する補助(海外知財訴訟保険事業)
特許庁は、我が国の中小企業が海外において知財係争に巻き込まれた場合に対応するため、海外知財訴訟費用保険の掛け金の一部を補助しています。
【運営団体】:日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会
【引受保険会社】:損害保険ジャパン株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社
【応募資格】:各地の商工会議所及び商工会の会員並びに中小企業団体中央会の組合等に加入している者
【補助率】:保険加入時の掛金の1/2(2年目以降の更新の場合は、掛金の1/3)
【募集期間】:2022年7月1日始期分(7月1日付け加入分)より開始予定
【保険期間】:2022年7月1日午前0時~2023年6月30日午後12時
詳細は特許庁HPをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_sosyou_hoken.html
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発行元 エスキューブ株式会社/国際特許事務所
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