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メルマガ11月号をお届けします。今月の知財基礎講座では「 特許庁の審査結果を受け取る時期 」についてお伝えします。
また、 音楽教室での著作権使用料の徴収に関する最高裁判決をご紹介いたします。是非ニューストピックをご覧ください。
━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━━
2022年11月号
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■知財基礎講座■
(10)特許庁の審査結果を受け取る時期
■ニューストピックス■
●最高裁・音楽教室の著作権使用料「生徒の演奏に関しては徴収対象外」と判断
●第一三共・BRAF阻害剤の米国特許侵害訴訟でノバルティス社が控訴
●塩野義製薬・COVID-19治療薬を低中所得国へ提供「医薬品パテントプール」とライセンス契約締結
●国際出願関係手数料改定のお知らせ
●知財高裁14件目の大合議判決:特許侵害で多額の損害賠償命令
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■知財基礎講座■
(10)特許庁の審査結果を受け取る時期
【質 問】
特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?
当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?
【回 答】
審査請求を行った後、一般的には、10カ月程度で特許庁から審査の結果を受けとることができます。
<特許庁が受け付けている審査請求の数>
特許出願した発明について特許の付与を認めることができるかどうか特許庁が検討・判断する審査は、特許出願手続と別に審査請求が行われた後に開始されます。
近年、日本国特許庁が受け付けている審査請求の数は毎年24万件程度です(特許行政年次報告書2022年版)。
審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、一日でも先を争って行なった特許出願で特許を請求している発明を改良したより良い発明について、後に特許出願した等々の事情が生じることを考慮して、出願日から3年以内に審査請求することが許されています。
出願日から3年経過しても審査請求が行われない場合、出願後1年6月経過した時点で出願内容が特許出願公開公報として特許庁ホームページ(J-Plat Pat)から世界中に公表され、その後の特許出願で特許請求される発明に対する先行技術文献の地位を確保したという事実は残りますが、特許出願自体は消滅します。その後に特許出願を復活させて審査を受けることはできません。
特許庁が公表しているデータによれば、特許出願の中の75%程度が審査請求され、25%程度は審査請求することなしに消滅しているものと思われます。
<審査の結果を受けとれる時期>
審査請求を行っても次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。特許庁審査官の手元にあるものから順に審査が進められていますので審査請求後、審査の順番が来るのを待つことになります。
特許庁が公表しているデータによれば、審査請求後、特許庁から審査の結果(First Official Action=FA)を受けとるまでの審査順番待ち期間は平均で10.1カ月です(特許行政年次報告書2022年版)。
技術分野により審査速度に相違がありますので、どの技術分野でもこの程度の期間で審査結果を受けとれるとは限りませんが、目安としては、審査請求後10カ月程度で特許庁の審査結果を受けとることができます。
一回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には60日以内に意見書、補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。
この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。一回目の審査結果が拒絶理由通知で、意見書、補正書提出で拒絶理由解消して特許成立するならば、速ければ、審査請求から1年~1年半程度で特許成立します。
<早期審査>
特許庁は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を採用しています。
早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。
早期審査の対象になる出願は(1)実施関連出願、(2)外国関連出願、(3)中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願、(4)グリーン関連出願などです。
ここで「中小企業」とは中小企業基本法等に定める中小企業のこととされており、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本金の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば「中小企業の出願である」として早期審査を受けることができます。
特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許成立させたい場合、特許出願と同時に審査請求し「早期審査の事情説明書」も提出すれば、出願後3カ月程度で審査結果を受け取り、1年以内に特許権成立させて、出願公開公報が発行されるより前に特許公報が発行されることがあります。
<むすび>
一般的には審査請求後10カ月程度で、また、早期審査を受ければ3カ月程度で審査結果を受けとることが可能です。
特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期、早期審査請求を行うかどうか、等々をご検討ください。
<次号のご案内>
次号は、特許調査でライバルメーカーが行っている特許出願を発見したときにどのような対応を行うことが考えられるかご質問に回答します。
■ニューストピックス■
1.最高裁・音楽教室の著作権使用料「生徒の演奏に関しては徴収対象外」と判断
音楽教室のレッスンにおける楽曲の演奏に関し、著作権使用料を支払う必要があるか否かが争われた訴訟の上告審で、最高裁は、レッスンにおける生徒の演奏は使用料徴収の対象にならないとする判決を言い渡しました。
同時に、上告審の審理の対象外となった教師の演奏は、使用料徴収の対象となり著作権使用料の支払いが必要という第二審の判断が確定しました。
・裁判年月日:最高裁(第一小法廷) 令和4年10月24日
・事件番号:令和3(受)1112
・事件名:音楽教室における著作物使用に関わる請求権不存在確認請求事件
・判決:上告棄却
▼判決文はこちらをご覧ください。
・最高裁:令和3(受)1112
2.第一三共・BRAF阻害剤の米国特許侵害訴訟でノバルティス社が控訴
第一三共株式会社(東京都中央区)は、10月28日付のプレスリリースで、同社の米国子会社Plexxikon社とNovartis社(スイス)とのBRAF阻害剤Tafinlar®に関する特許侵害訴訟で、Novartis社が10月27日(現地時間)、米国連邦巡回区控訴裁判所に対し、米連邦地裁の判決を不服として控訴したことを発表しました。
第一三共は、「Plexxikon社の主張を認容した米連邦地裁の判決は妥当であると考えており、控訴審においてもPlexxikon社の主張の正当性が認められるように対応して参ります」と明らかにしました。
▼プレスリリースはこちらをご覧ください。
20221028_当社子会社の米国特許侵害訴訟(控訴)に関するお知らせ_Final.pdf (daiichisankyo.co.jp)
3.塩野義製薬・COVID-19治療薬を低中所得国へ提供「医薬品パテントプール」とライセンス契約締結
塩野義製薬株式会社(大阪市中央区)は、10月4日付のプレスリリースで、国連が支援する公衆衛生機関である医薬品パテントプール(Medicines Patent Pool:スイスジュネーブ、以下「MPP」)と、現在開発中のCOVID-19治療薬エンシトレルビルフマル酸について、低中所得国に広く提供することを目的としたライセンス契約を締結したことを発表しました。
MPPは本契約に基づき、低中所得国への同薬を広く提供することを目的に、適格な品質で製造可能なジェネリック医薬品メーカーに対して、生産および供給に関するサブライセンスを付与することができ、これにより117ヵ国に同薬を供給することが可能とのことです。
なお、塩野義製薬は、世界保健機関(WHO)がCOVID-19を国際保健上の緊急事態に指定している期間は、本契約の対象となる国で発生する売上に対するロイヤリティの受領を放棄するとしています。
▼プレスリリースはこちらをご覧ください。
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2022/10/20221004.html
4.国際出願関係手数料改定のお知らせ
2022年11月1日から、国際出願関係手数料が以下のとおり改定されました。
なお、中小企業等を対象とした国際出願に係る手数料(国際出願手数料、取扱手数料)について、国際出願促進の交付金支援制度があります。詳しくは特許庁ウェブサイト「国際出願促進交付金の交付申請手続」をご確認下さい。
1.国際出願手数料
2.取扱手数料
▼詳細は特許庁(JPO)ウェブサイトをご覧ください。https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html
5.知財高裁14件目の大合議判決:特許侵害で多額の損害賠償命令
知財高裁は10月20日、創立以来14件目となる大合議判決を言い渡しました。
本判決で、特許侵害訴訟における特許権者の損害額の算定に関して、侵害者が侵害行為により受けている利益の額をもとに推定した金額(特許法102条2項)に特許のライセンス料相当額(同条3項)を合わせた金額を特許権者の損害額として認定しました。
株式会社フジ医療器が控訴人(一審原告)となった本件訴訟では、知財高裁は被控訴人ファミリーイナダ株式会社(一審被告)に対し、約3億9千万円の賠償を命じました。
一方、原告と被告の立場を変えてファミリーイナダが原告となった特許侵害訴訟での大阪地裁における判決は9月15日に言い渡され、フジ医療器に対し、総額約28億円の賠償を命じていました。
多額の損害賠償を認めた背景には、2019年特許法等改正により損害賠償算定方法の見直しがなされたことが考えられます。改正特許法では、侵害者が得た利益のうち、特許権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスしたとみなして損害賠償を請求できることが明記されました(特許法102条1項2号)。
▼判決文はこちらをご覧ください。
・知財高裁:令和2年(ネ)第10024号
・大阪地裁:平成30年(ワ)第1391号
・大阪地裁:平成29年(ワ)第7384号
大合議事件…知的財産権を巡る紛争は,重要な法律上の争点を含み,裁判所の判断が企業の経済活動及び我が国の産業経済に重大な影響を与える事案も少なくありません。知的財産権事件では,一定の信頼性のあるルール形成及び高裁レベルでの事実上の判断統一が要請され,その要請に応えるため,平成16年4月に,5人の裁判官から構成される合議体により審理及び裁判を行う制度(いわゆる大合議制度)が導入されました。
▼これまでの大合議判決はこちらをご覧ください。
https://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html
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