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[学会で発表しました]2024/3/16 エリブリンメシル酸塩事件で顕在化したパテントリンケージの課題と解決策の検討

2024年3月16日、国際取引法学会の全国大会において上記テーマで発表いたしました。

要旨:

医療用医薬品は、一般の製品と異なり、その製造販売は薬事当局により規制されている。
そのため、『先発医薬品』(新薬)と『後発医薬品』が明確に区別されており、後発医薬品
は、先発医薬品の特許とデータ保護による独占権満了後でなければ市場参入できない。後
発医薬品の審査においては、薬事的事項の他、先発特許への侵害有無の確認(パテントリ
ンケージ)が行われている。
パテントリンケージは、米国のハッチ・ワックスマン法で初めて導入された考え方であ
り、国際的な知財の取極めである TRIPS 協定には規定がない。その後、対米 FTA や TPP
の要請により数か国が導入している。日本には、パテントリンケージを規定した法律は存
在せず、薬事当局(厚生労働省)の通知に基づいて、当局と当事者の間で、非公開に先発
医薬品特許との抵触を確認しているにとどまり、かねてより学者や実務者の間で透明性や
公平性等の課題が指摘されていた。さらに、薬事当局の承認を得たにもかかわらず、その
後の訴訟で特許侵害が認められるケースが散見されることから、パテントリンケージの判
断に誤りがある可能性も否定できない。中でも、判断の誤りにより後発医薬品が承認され
ない場合は、その事実が公になることはなく、後発メーカーは打つ手に窮する。
この様な状況下、パテントリンケージのため承認が得られなかった後発メーカーが、先
発特許への侵害は存在しない(そのため差止請求権・損害賠償請求権は存在しない)こと
の確認を求めて債務不存在確認訴訟を提起した(エリブリンメシル酸塩事件)。第一審・第
二審共に、原告(後発メーカー)に、原告は訴えの利益を有しない、不服があれば薬事当
局に対して行政訴訟を起こせばよいとの判断だったが、これを受けて業界誌が反応し、複
数回にわたって厚労省を揶揄する記事を掲載して、業界を騒がせている。
本発表では、パテントリンケージの基本的な考え方と制度の位置づけ、並びにエリブリ
ンメシル酸塩事件で顕在化した日本のパテントリンケージの現状と課題を整理したのち、
海外の制度、学者・実務者の見解、及び日本の厚生行政と製薬業界の慣例の観点から、課
題解決策を検討する。

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