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医薬品特許戦略ブログ 第8回:メキシコのパテントリンケージ

先発対後発両サイドの特許戦略に必要不可欠な知識や最近の話題をお届けする「医薬品特許戦略ブログ」を配信します。製薬関連企業の皆様はもちろん、アカデミアや投資家の皆様にも参考にしていただけるような、実践的なポイントをお届けしたいと思います。

今回は、「メキシコのパテントリンケージ」について

メキシコは2003年にパテントリンケージ制度を導入した。

(1)制度概要

 メキシコは,先発特許を侵害する後発品の承認を防止し,特許権の法的安定性を担保するため,2003年にパテントリンケージ制度を導入して,特許当局(Mexican Institute of Intellectual Property:IPMI)と薬事当局(Federal Commission for Protection against Sanitary Risks:COREPRIS)の協力体制を確立した。制度導入以前は,このような協力体制は存在せず,後発品の承認による特許侵害が起きていたようだ。同制度の法的根拠は,2003年9月19日に制定された健康用品規則(HSR)の第167条の2,および工業所有権法規則(IPLR)の第47条の2に規定されている。

 メキシコ政府は,かかる規定により,TPPとUSMCAの要請に応えているというスタンスである。

(2)先発特許情報の登録

 先発特許は,IMPIが半年ごとに公開する特許リスト(Medicines Gazette,IMPI Gazette)に収録されている。同リストの収録対象は,IMPIよりガイドラインが発行されている。収録対象はアロパシー薬(西洋医学の薬)であり,当初は物質特許のみが収録されていた。その後,2010年の最高裁判決により製剤特許が特許リストに収録されるという基準が確立し2012年より施行されている。また第二医薬用途特許の収録には,裁判所命令が必要である。

(3)後発医薬品の申請と先発への通知

 医薬品の販売許可を得るためにCOFEPRISに提出する書類とともに,その製品によって特許が侵害されないことに関する宣誓書を提出することが義務付けられている。宣誓書には,申請者が,関連特許を譲受,またはライセンスを受けたこと,有効な関連特許は存在しないことを記載することができる。宣誓書に,関連特許を譲受,またはライセンスを受けたことを記載する場合,譲受またはライセンスがIMPIに登録されていることが必要である。

 後発品が申請されると,COFEPRISが直接IMPIと連携して手続を進め,後発品の承認前に,申請者から提出された情報をCOFEPRISが,IMPIに送付し,IMPIが特許侵害有無を確認している。原則として当局間で判断され当事者(申請者,先発サイド)がかかわる場面はない。後発品が申請されても,先発サイドへの通知はされないようだ。より正確な判断を求める場合,当事者は積極的に当局にコンタクトすべきであるとの意見がある。

(4)後発医薬品の承認・販売停止

 後発医薬品が申請され,関係当局間でパテントリンケージが行われていることを理由に後発品の承認や販売が停止されるとの規定はない。

(5)後発医薬品の独占販売権

 後発品申請者が承認を得た場合でも,独占販売権は付与されない。

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