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医薬品特許戦略ブログ 第9回:シンガポールのパテントリンケージ

先発対後発両サイドの特許戦略に必要不可欠な知識や最近の話題をお届けする「医薬品特許戦略ブログ」を配信します。製薬関連企業の皆様はもちろん、アカデミアや投資家の皆様にも参考にしていただけるような、実践的なポイントをお届けしたいと思います。

今回は、「シンガポールのパテントリンケージ」について

シンガポールは2004年にパテントリンケージ制度を導入した。

(1)制度概要

 シンガポールでは2004年に,対米FTAの規定により,後発品の発売前に,先発特許への侵害を取り締まることを目的としてパテントリンケージが導入された。

(2)先発特許情報の登録

 シンガポールでは,先発特許情報の登録は実施されていない。

(3)後発医薬品の申請と先発への通知

 後発医薬品の承認申請者は,申請時に,申請する医薬品が特許を侵害していないこと,あるいは特許は無効であることを記載した宣誓書を,薬事当局(HSA: Health Sciences Authority)に提出する必要がある。宣誓書には,特許との関係について,カテゴリーA1,A2またはBのいずれかを記載する。A1は,申請者が特許権者であるか特許権者の承諾を得ている,A2は,特許は無効である,Bは,申請する医薬品は特許を侵害していない,というものである。なお,宣誓書に虚偽がある場合罰金または12ヶ月以内の禁固刑が科される。

(4)後発医薬品の承認・販売停止

 カテゴリーBの宣誓書により申請する場合,薬事当局は申請者に対して,申請したことを特許権者に通知するよう要求する。特許権者に通知が届いたのち,特許権者が訴訟を提起する,または特許が有効であり特許侵害となる旨の宣誓を得るための期間として,45日間承認プロセスは停止される。この間に訴訟が提起されない場合,承認プロセスは再開され,訴訟提起された場合,承認プロセスは最大30カ月間(45日間の停止を入れると31.5ヶ月)停止される。30ヶ月以内に申請者側に有利な結論が出ると,申請者は裁判所に承認プロセスの停止を中止するよう要求することができる,一方,特許権者側に有利な結論が出た場合,申請者は特許切れが近づくまで承認を待たなければならない。

(5)後発医薬品の独占販売権

 後発品申請者が承認を得た場合でも,独占販売権は付与されない。


参考文献:

Tim Headley et al.「Singapore’s Patent Linkage Scheme and its effects on Marketing Approval for Generic Drugs」(2020) https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=3f5760db-39a8-47fd-8d86-95de83072e36 (as of May 8, 2023)

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