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医薬品特許戦略ブログ 第12回:韓国のパテントリンケージ

先発対後発両サイドの特許戦略に必要不可欠な知識や最近の話題をお届けする「医薬品特許戦略ブログ」を配信します。製薬関連企業の皆様はもちろん、アカデミアや投資家の皆様にも参考にしていただけるような、実践的なポイントをお届けしたいと思います。

今回は、「韓国のパテントリンケージ」について

韓国は2012年にパテントリンケージ制度を導入した。

(1)制度概要[i]

 韓国は,対米FTAにより2012年にパテントリンケージ制度を導入した。2012年には,医薬品の特許目録搭載と特許権者への後発品申請の通知などが実施され,2015年3月に販売禁止措置の施行により制度の全面施行を開始した。パテントリンケージ制度は,2015年3月15日に施行された改正薬事法(法律第13219号)により規定されており,医薬品の特許目録搭載,後発医薬品の許可申請事実の通知,後発医薬品の販売禁止,および後発医薬品の優先販売品目許可の4つのステップにより構成される。このうち後発医薬品の優先販売品目許可は,韓米FTAの要請ではない。

(2)先発特許情報の登録[ii]

 韓国には,米国のオレンジブックに相当する先発特許のリスト「医薬品特許目録」があり,通称グリーンリストと呼ばれる。

 グリーンリストの収録対象となるのは,医薬品の承認を受けた事項と直接関連がある,物質,剤形,組成物,医薬品用途(効能・効果及び用法・容量)に関する特許であり,製法,中間体,装置に関する特許は収録対象とならない。また,承認日前に出願された特許であることが必要である。オレンジブックと異なり,収録対象は低分子医薬品に限られない。

 医薬品申請者は,承認後30日以内に,承認を得た医薬品に関する特許情報を薬事当局(KFDA,食品医薬品安全処)に提出しなければならない。特許番号のみを掲載する米国のオレンジブックと異なり,グリーンリストは,特許をクレーム毎に収録するので,申請者は,承認を得た医薬品をカバーするクレームを確認したうえ承認を得た医薬品とクレームとの関係に関する詳しい説明を提出する必要がある。また承認後に特許が付与(登録)された場合,承認取得者は,特許付与日から30日以内にKFDAに特許情報を提出しなければならない。

 グリーンリストに収録された特許を変更または削除する場合は,変更申請書を提出し,KFDAにおいて認められる必要がある。この他特許の存続期間満了,無効確定,グリーンリストの収録料未納の場合はリストから削除される。リストへの特許の収録・変更・削除の要件は米国のオレンジブックより厳しい印象であり,実際に特許の収録に関する訴訟も起きている[iii]。なお,グリーンリストは,薬事当局(食品医薬品安全処)のウエブサイトで公開されている。

(3)後発医薬品の申請と先発への通知[iv]

 品目許可申請,すなわち医薬品の承認申請をする後発品申請者は,グリーンリストに収録された特許との関係について,「1.特許の存続期間は満了している」「2.特許の存続期間が満了した後に販売する」「3.特許権者などが通知しないことに同意した」「4.収録されている用途特許が,申請する後発品の効能効果に関するものではない」「5.特許は無効であるか,非侵害と判断される」のいずれかを記載した特許関係確認書を提出する。「5」に基づいて申請する場合,申請から20日以内に,後発品申請日,特許権の存続期間満了前に販売する目的で申請したこと,及びグリーンリストに収録された特許が無効または特許非侵害と判断する根拠を,先発サイド(承認取得者と特許権者)に通知しなければならない。この通知は承認の要件となっており,通知しない場合後発品は承認されない。さらに,先発サイドへ通知をした場合,通知をした者はその事実を証明する書類をKFDAに提出しなければならない。

 また,申請から20日経過後に通知した場合,最も遅い通知日が申請日とみなされる。このことは,最初に承認された後発品に与えられる優先販売許可の適用を受ける際に不利益となりうる。

(4)後発医薬品の承認・販売禁止[v]

 通知を受けた特許権者は,通知を受けた日から45日以内に,特許訴訟等を提起して,KFDAに対して販売禁止の申請をすることができる。販売禁止の申請があった場合,グリーンリストに収録された特許の無効または非侵害に関する審判決がある等の事情がある場合を除き,KFDAは通知の日から9カ月間後発品の販売を禁止する。

 販売禁止の効力は,後発品が特許の権利範囲に属しないという審判決,特許無効の審判決,グリーンリストへの収録が違法である旨の審判決,特許期間の満了等により消滅する。

(5)後発医薬品の独占販売権[vi]

 先発への通知が義務付けられる申請を最初にした後発品申請者は,申請前に特許無効審判・延長登録無効審判・権利範囲確認審判を請求し,通知の日から9カ月経過前に勝訴した場合,優先販売品目許可の申請をすることができる。優先販売品目許可の期間は,最初に当該許可を受けた者の販売可能日から9カ月である。

[i] 韓国食品医薬品安全処「医薬品許可特許連携制度の解説書・日本語版(JETRO)」(2015)
[ii] 医薬品特許目録(薬事法第50条の2~第50条の3)
[iii] グリーンリストへの特許収録に関する行政訴訟として,カトレラ錠(HIV治療剤,アッヴィ)やミカルディスプラス(抗高血圧剤,ベーリンガーインゲルハイム)の収載拒否処分取消訴訟がある。
[iv] 品目許可申請の通知(薬事法第50条の4)
[v] 薬事法第50条の5
[vi] 優先販売品品目許可(薬事法第50条の7~10)

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