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医薬品特許戦略ブログ 第15回:中国のパテントリンケージ

先発対後発両サイドの特許戦略に必要不可欠な知識や最近の話題をお届けする「医薬品特許戦略ブログ」を配信します。製薬関連企業の皆様はもちろん、アカデミアや投資家の皆様にも参考にしていただけるような、実践的なポイントをお届けしたいと思います。

今回は、「中国のパテントリンケージ」について

中国は、2021年にパテントリンケージ制度を導入した。

(1)制度概要

 中国は,対米FTAの要請,医薬品産業における熾烈な国際競争,国内の製薬産業の発達や市場のニーズを受けて,2021年にパテントリンケージ制度を導入した。すなわち同年6月1日に改正中国特許法第76条を施行し,続く2021年7月4,5日に,薬事当局(国家医療品管理局(NMPA)),特許当局(中国知的財産庁(CNIPA))および司法当局(最高人民法院)がそれぞれ,パテントリンケージの運用に関する具体的な規則を公布したことにより制度の施行を開始した。

 同国の制度は,先発特許情報の登録,後発医薬品の申請と先発への通知,後発医薬品の承認停止,後発医薬品の独占販売権から構成される。

 中国では,低分子医薬品,バイオ医薬品の他,漢方薬もパテントリンケージの対象となるが,低分子医薬品と,バイオ医薬品・漢方薬とでは,制度の適用が異なる。

(2)先発特許情報の登録

 医薬品の承認を受けた者(MA保有者)は,承認後30日以内に,特許およびその他の関連情報を中国の市販医薬品特許情報登録プラットフォーム(登録プラットフォーム)に登録しなければならない。承認後に特許が発行された場合は,発行から30日以内に特許情報を登録する必要がある。また,登録情報に変更があった場合は,変更があった日から30日以内に情報を更新する必要がある。

 登録プラットフォームに掲載可能な特許は,低分子医薬品については,物質,組成物,医薬用途に関する特許,バイオ医薬品については,有効成分の配列,医薬用途に関する特許,伝統的な漢方薬については,組成物,エキス,医薬用途に関する特許であり,中間体,代謝物,結晶形,製造方法,スクリーニング方法に関する特許は掲載されない。

(3)後発医薬品の申請と先発への通知

 後発品申請者は,申請を行う際に,登録プラットフォームに収録されている特許との関係についてタイプ1~4のいずれかの証明書を提出する。タイプ1は,先発品に関する特許は登録されていない,タイプ2は,特許は消滅したまたは無効となった,あるいは後発品申請者は特許権者からライセンスを受けている,タイプ3は,後発品申請者は,先発特許の満了前に後発品を販売しないことを約束する,タイプ4は,特許権は無効とされるべきものであるか,又は後発医薬品は特許権を侵害していない,である。証明書は登録プラットフォームで公開され,後発品申請者は,証明書の公表から10日営業日以内に先発サイドに通知しなければならない。

(4)後発医薬品の承認停止

 特許権者は,タイプ4証明書が公開された日から45日以内に,同証明書に対して北京知的財産裁判所での民事訴訟,または中国国家知識産権局での行政手続(審判)を請求する権利を有する。これら当局が事件を受理した場合,特許権者はNMPAにその旨を通知しなければならない。NMPAは,当該通知を受領後,事件受理の日から9ヶ月間の待機期間を設ける。この間後発医薬品の承認プロセス(審査)は進めるが,承認は行わない。なお,バイオシミラー,漢方薬については,待機期間は設定されない。

 待機期間終了後,有効な判決または審決により,後発品が先発特許を侵害すると判断された場合,NMPAは,その特許が失効するまで後発品の承認を保留する決定を行う。ただし,特許権を侵害しない場合,特許権が無効である場合,または適時の審判決が得られない場合は,後発品は承認される。

(5)後発医薬品の独占販売権

 低分子医薬品の後発品申請者には,最初に承認を受け,かつ最初にタイプ4証明書による訴訟または審判に成功すると,12ヶ月の市場独占期間が与えられる。ただし,バイオシミラー,漢方薬には市場独占期間は与えられない。

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